UO暦4ヶ月、あやの日記です。 大和シャードで、気まぐれにお散歩してます。
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それぞれの1日〜綾(あや)
 双子―、あやねとあやのの2人が来て、2週間が過ぎた。
 その間、最も大きな出来事は、彼女達が新しい家を持ったことである。全くの偶然で、それは叶った。チョコレート・コスモスから北に向かって散歩をしていた4女のあやねが「腐りかけの大きな家」を見つけ、その日の夕食で、何気なく、そのことを皆に報告した。

 とたんに3人の姉達は色めきたった。「どうしてそれを、早く言わないの」問い詰めるように、3人はあやねを見つめる。あやねと、双子の妹であるあやのはきょとんと3人の姉を見つめ返す。
「えっとね、」あやが言う。「それって、すごく珍しいことなの。うん、チャンスかも。ねえ場所を教えて」
 そして、あやねは散々苦労しながら、その場所を説明した。
「たぶん、そこで間違いないと思うけど……」
「よし、さっそく行ってくる」
 あやは家を飛び出す。

 結果としてあやは、仲間達にも助けられ、なんとかその家を手に入れることに成功した。
 そして、簡素ながらも大きな家を建て、今は細かい部分に手を入れ始めている。

「こんな感じにしてみたけど、どう?」
 5人一緒の朝食を終えたとき、あやは4人の妹に尋ねる。家を入手して以来、数えきれないくらい繰り返された質問である。その都度、妹達も熱心に答えた。
 しかし、それも最初の数日に限ってのことで、自分の空間を確保した者から順に、その熱意は失われつつある。皆、そろそろ生活ペースを元に戻したくなってきている。

 例外なのが、この長女のあやである。
 普段、家のことを顧みず、狩りに専念してきたせいか、新しい土地を得て、あやは「家のこと」に執心している。妹達にも、それに異存はない。元々、最初の小さな家ピンク・パールはあやが建てた。次女のあやかだけが、かろうじてその家を知っている。
 次の家、中サイズのチョコレート・コスモスも、あやがほとんど独力で建てた。
 3女のあやながやってきたのはその後のことになる。

 そして次の双子、4女のあやねと5女のあやのが来て間もなく、この家を建てることになった。
 このあやねと、あやのは、家についてはまだよく分かっていない。さしあたりの希望を言って、それが叶うと、もう遊びたがっている。
 2女のあやかは、自室や客間は自分が作ると宣言して、あとは魔法とアルケミのスキル・アップのことばかり考えている。3女のあやなもまた、自分の作業場にこそ大変なこだわりを見せたが、あとは「お姉ちゃんに任せるから」と呟いたきり、もう口を出さなくなった。

「いいかな? これで」あやが再び問いかける。妹達は口をそろえて「うん」と返事をする。物足りなさを感じながらも、「なんか、希望とかないかな?」と、あやは更に聞いてみる。
 4人を代表して次女のあやかが「なんか思いついたことがあったら言うから」と答える。残りの3人もうなずく。

「そっかぁ……。あと、この家の名前、なんか提案とかない?」
 4人は黙っている。考えるそぶりを見せる子もいる。無関心、というわけではないらしい。また、あやかが口を開く。「お姉ちゃんこそ、何か、もう考えてるとか」
「うん」あやは、我が意を得たとばかりに答える。「ホワイト・ナイトとかどうかな?」
「白い騎士?」と、あやか。「白馬に乗った騎士みたいな」

「うぅん。Knightじゃなくて、Night」
「白夜のこと?」
「それも違う。眠れない夜って意味なの。White Night」

white night



(続く)
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チョコレート・コスモスの日常30〜夕暮れ時に
「そっかぁ……。そういう時期ってあったなぁ。私にも」あやかが、不意に遠い目をする。「始めた頃って、いろいろ新鮮で楽しかったな」
 あんたは、今でもじゅうぶん楽しそうだし……。あやは内心で苦笑する。
 あやかが続ける。
「ね、そろそろお腹空かない? 私、もうぺこぺこなんだけど」
 そう言われてみると、部屋に落ちる影が、灰色に滲んできている。そして、日のあたっている部分は、薄い朱色に染まっている。

「私、炉を持ってくるね」と、あやなが立ち上がる。
「あ、じゃあ、料理の方、お願いしといていいかな」と、あやも立ち上がり2人に告げる。「私、ちょっと双子ちゃん達、迎えに行ってくるから」
「あぁ、そうそう。その前に」あやかが、あやに声をかける。「あのワニ、連れてく? まだお庭にいたみたいだけど、リリースするんでしょ?」
「それがねぇ」あやが、微妙な笑みを浮かべる。「あげちゃったの、あやのちゃんに。欲しいっていうから」
 あやはそう答えると、あやなが、なぜか目を丸くしているのを横目で見ながら、部屋を出て行く。

 騎士魔法で、あやはヘイブン銀行前に降り立つ。そして、きょろきょろと辺りを見回す。
 夕日はすでに、山の向こうに落ちてしまっているようで、その赤い名残だけが、まだうっすらと残っている。空気も、さっきまでより冷たく感じられる。

 まあ、夜だって、ここではそんなに危なくはないんだけどね。
 だけど、食事は一緒にしないと。家族なんだから。実際、彼女達の家―チョコレート・コスモスでは、よほどのことがない限り、特に夕食は皆で一緒に摂る。「晩御飯までには帰ってくるのよ」とは言ったものの、その辺りのことが、双子にはちゃんと伝わってなかったかも。

 よっぽど楽しいのかも知れないけど。あやは、また昔の自分を思い出す。双子―あやねとあやのが来てから、なぜかそうなる。
 うん。何に夢中になってるんだろ。
 初日のことではあるし、決まりを破ったからといって、べつにあやは怒ってはいない。まあ、ひとこと言うくらいのことはしようと思う。だけど、それより、今日一日、2人が何をやったのか、訊いてみるのが楽しみな気がする。

 と、あやの耳に、微かに歌声が飛び込んできた。それも、1人ではない。コーラスのようだ。
 ともあれ、あやは歌声のする方へと向かってみる。
 そして、あぁ、あれかぁ……と、了解する。

 4人の歌い手がカラフルな衣装を着て、くるくるまわりながら歌うコーラス・グループ。
 知らなかったな。ここに来てたんだ。だけど、あれかな……、そんな噂も聞かなかったし、ゲリラ・ライブかしら。
 思わず、あやは足を止める。ほんと、こういうのもいいな。あやかとあやなを待たせてるんじゃなかったら、ゆっくり聴いてたいけど。そして、あやは観客の中に、探している2人―あやねとあやのを見つける。2人は、食い入るように舞台を見つめている。

 ここで声をかけるのは、なんだかかわいそうな気がする。それくらい熱心に、2人は曲に聞き入っている。
 もう2、3曲くらいなら待ってもいいかな。まだあどけなさの残る、舞台に夢中なその横顔を見ながら、あやは思う。そのうちに、2人のうちのどちらかが私に気付くだろう。いや、気付くのはたぶん2人同時だろう。
 2人の、今日一日の土産話を訊くのはそれからでいいし。
 初夏の夕暮れ時、あやはしばし心地良い感慨に浸る。


(第3部 了)
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チョコレート・コスモスの日常29〜相談
「まあ、相談ってほどのことじゃないけど」と、あやが話し始める。
 あやなは、すぐにキッチンに戻ってきた。あやかはお茶を淹れながら、あやに顔を向ける。
「あやねちゃん1人が来ると思ってたんだけど、もう1人、あやのって子が来て……。まあ、双子だから一緒にって、分からなくもないけど」

「もちろん、ウェルカムだけど」あやかが言う。「やっぱ、家族って多い方が楽しいし」
「うん」と、あやなも同意する。
「うんうん、それでね」あやが続ける。「さしあたり、やっとくことってあるかな。ルーンとかポットはあやかに、服や装備はあやなに任せるけど」
 2人がうなずく。
「あとね、部屋割りね。空いてる部屋をあやねちゃんに準備したけど、もう一部屋作った方がいいかな、やっぱり」

「ん〜、物置きを片付けるって手もあるけど、それじゃ、かわいそうかもだし……、ねえねえ、いっそのこと、家を建て直すってのは、どう?」
 そう主張するあやかは、はしゃいでいるようにも見える。
 あやが答える。
「お金かかるよ。アイテム整理も大変だし」
「えっとね」と、あやか。「私も狩り、協力しようかと。前から思ってたんだけど、いい機会だし」

 あやは考える。
「あのね、私が通ってるところは、あんたにはまだきついと思う……」
「あ、いやいや、とーんでもない。お姉ちゃんの行ってるとこなんか。あの、あやなのね裁縫に使う皮……」
「うん」と、あや。
「そのね、布だけじゃ、もうスキルが上がりにくくなったみたいで。ね、あやなちゃん」
 あやなは、うなずく。
「それで、皮採集は、しばらく私が担当しようかなと。それだと、お金も稼げるし一石二鳥」
 あやは、もう一度考える表情を作って、「いいんじゃないかな、それ」と答える。そして、あやなの方を向いて、「赤い皮もいるかな」と訊いてみる。
「それ、無理……」
 あやなは、首を振る。

 そして今度は、あやながしゃべりだす。
「あの、私、何を作ったらいいかな。その2人の為に」
「ん〜、直接訊いてみたらいいと思うけど……、」と、あやかが言いかけて、「ね、お姉ちゃん。その双子って、どんな感じ? 性格とか」と、あやに話を振る。
「まだ、分からないわよ。さっき、会ったばっかりだし。あ、だけどね、なんか同じ子が2人いる感じかな」
「それ、さっきも言ったけど。よく、分かんないよぉ、それじゃ」
「えっとね、とりあえず2人のうち1人に、髪型と髪の色を変えてもらったんだけど、同じ顔で、体格も同じくらいで、雰囲気もそっくり」
「……」
「それで、髪が黒くて長い方があやねで、白っぽいショートがあやの」

「その2人はここで、何をやるの?」と、あやな。
「うん。まだ決めてない。私達もそうだったじゃない。それで今、2人はヘイブンで遊んでる……、まあ、遊んでいるうちに、やること決まってくると思うし」
 そう答えて、双子の帰宅が遅いことに、あやは気付く。


(続く)
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チョコレート・コスモスの日常28〜綾香と綾菜の帰宅
「ただいまぁー」表で明るい、あやかの声がする。
 あやは、ふと我に返って顔を上げる。まだ、窓から差し込む日差しは明るい。ただ、さっきまでよりキッチンに置かれたこまごましたものの影が長くなっている。あやは、あわてて何枚もの図面のようなものを懐に隠す。

「おかえり」あやは、部屋に入ってきた2人―あやかとあやなに声をかける。「ずいぶん、早かったじゃない」
「そうかなぁ」あやかが答える。「でもね、こういうのは、もうちょっと遊びたいくらいのとこで止めとくのがコツなの」
「そう?」
「うん。そしたらね、次の機会までの間、」
「うん」
「いろいろ想像したり、計画立てたりして、楽しみが長持ちするし」
 あやかが得意げに言う。あやは、なんとなく説得力を感じながら、あやかの後ろに立っているあやなに目を向ける。あやなは大きな包みを抱えている。自然、あやの注意はその包みに向かう。

「それ、何?」
「もらったのよね」あやかが振り向いて、あやなに言う。あやなは、いつものように無言でうなずく。
「プレゼント?」
「そう。男の子達が、あやなちゃんにって、くれたの」
「ゴーレム・セット」と、あやなが小声で、しかし嬉しそうに付け加える。「いろんなパーツが入ってて、これでゴーレムが作れるの」

 え? とあやは一瞬、リアクションに戸惑う。そういうのって、男の子が、女の子に送るものだろうか、ふつう。いやいや、職人の世界では、また違う価値観があるのかもと、あやは自分を納得させる。
「へぇ〜、よかったね。あやなちゃん」
 思わず声が上ずったような気がする。わざとらしくなかったかな……。

「お姉ちゃんは、何してたの? 今日」今度は、あやかが聞いてくる。
「あ、うん。それがね……」
「何なに〜?」
「来たよ。あんた達が出て行ってから、すぐ後くらいに」
「あやねちゃんが来たんだ」
 思わず、あやかとあやなが声をそろえる。
「あ、それがね」あやは、ここで一呼吸置く。2人の妹が目で姉を促している。「同じ子が2人来たの」
「同じ?」
「うん……。まあ、手っ取り早く言えば双子なんだけど、なんか同じなの。しゃべるタイミングも動作も。それにね、なんだか2人で不思議なコミュニケーションとってるみたいだし」

「詳しく聞かせてよ」あやかが言う。
「あ、これ、ちょっと片付けてくるから」とあやなが言う。「話し、ちょっと待ってて」


(続く)
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チョコレート・コスモスの日常27〜お留守番
「さてと、」
 再び静かになった家で、あやは大きく伸びをする。そして、大きく息を吐き出す。

 2女のあやかと3女のあやなは、男の子達と遊びに行くと言って出かけている。どこで、何をする予定なのか、あやは知らない。
 つい先ほど、この家にやって来た双子、4女のあやねと5女あやのは、ヘイブンへと向かった。こちらは、当の2人とも、何をするのか決めずに出かけた。
 どちらの組も、楽しんでるといいなと、あやは思う。

 そして、我が身を振り返る。
 たまにはいいかな、こういうのも、と思う。普段であれば、戦士のあやは終日ダンジョンで狩りをしている。
 だけどまあ、たまにはのんびりと家のことでもしよう……。といって、家の中で私にできることって、あんまりないのよねぇ。新しく来た双子の、服や装備はあやなが作るし、2人が使うルーン・ブックやポーションなんかは、必要であれば、あやかが作る。

 う〜ん……。リフォームかぁ。
 順番からいって、あやね1人が来るものとばかり思っていた。ところが予想に反して、次のあやのまで一緒に来た。もちろん、新しい家族が増えるのは嬉しいことだ。ただ、2人はまだ当分の間は戦力にならない。
 加えて、いろいろと準備してやる必要がある。
 その中で、あやがしてやれることと言えば、お金……、である。

 うん。やっぱり、まだまだ私、頑張らないと。あやは、改めて思う。
 でもまあ、今日のところは、新しい間取りでも考えておこうかな。

 あやは、チョコレート・コスモスと名付けた家の中を、ぶらぶらと歩いて回る。
 ここをこうして、あそこもいじって……。ワニも、ずっと飼うんだったらスペースがいるし。あやは、紙とペンを取り出して、図面のようなものを描き始める。
 そして、次第に夢中になる。

 あやは、実は自分の家作りのセンスには、あまり自信がない。
 しかし周囲を見回すと、素敵な家の持ち主はベテランさんが多い気がする。センスって、生まれつきってのもあると思うけど、経験だって大切よね、やっぱり。あやは、自分にそう言い聞かせながら、実際に作れるかどうか不明な図案を、何枚も描く。


(続く)
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